トン族ならではの木造の建築技術が伝わる三江県巡り
2012年10月03日中国文化
三江県は中國五つの(侗)トン族自治県の中でもっとも人口の多い県であり、桂林から179キロ離れています。私たちツアー一行が2012年9月ある日の午後3時ごろ、龍勝県の雄大な棚田で有名な龍脊観光地をあとにしました。観光バスがおよそ1時間半かかり、途中龍勝県を経由し、夕方5時ごろ、三江県に到着しました。宿泊先が三江県にある一番良いとされる「三江県風雨橋国際大酒店」でした。私たちは待ったなしという気持ちでホテルにチェックインしたあと、すぐホテルの側に高く聳えた三江鼓楼を見に行くことにしました。
三江県は昔よりだいぶ町が広くなったうえ、きれいにもなりました。桂林からの国道が拡張されたほか、南の柳州市からの高速も出来ていますから、アクセスが大変便利になりました。このために三江県の周りにあるトン族の「程陽八寨」をはじめとした田舎へ向けてトン族独特の建築物や民族風情を満喫しようとする観光客の増加に拍車をかけました。この条件を利用し、地元政府も観光業に力を入れるようになりました。
トン族を巡る観光資源と言えば、まず何と言ってもあの精巧な形をする風雨橋と鼓楼、そしてユニークな地声で響くトン族の大歌(コーラス)です。この外に、トン族の村を挙げての「百家宴」と盛大な結婚式なども観光客の人気を集めることができます。更にお客の招待に欠かせないトン族の酸っぱい肉や魚などを生かす食生活も体験する必要があるとお勧めします。私たちは今回の日程の都合でこのトン族の代表的建物である鼓楼と風雨橋を観光のメインとされました。すべて木で出来た鼓楼はふつう、村の真ん中に建造され、中に太鼓が吊るしてあり、叩くと村中に聞こえていくことから、鼓楼と呼ばれています。この太鼓の音で村人が鼓楼の前の広場に集まってくる伝統があると伝えられています。
「風雨橋国際大酒店」の側の三江鼓楼は三江県のシンボルのようになり、その前にも三江県の民族広場が広がっています。鼓楼は高さ42、60mでおそらく中國トン族居住地において一番の高さを誇っています。あわせて56本の大黒柱に支えられた鼓楼は精密に27階の構造に造られています。そしてほとんど釘を使わず、すべてホゾとホゾ穴で組み合わせています。見れば開いた口が塞がらないほどのトン族の独特の技術ではないでしょうか?私たちはみんな悔いが残らないように下から150の階段を登り、一番上の27階まで挑戦しました。上に行くほど階段がきつくなったのですが、意外に安定感があり、さすがにトン族の建造物の上手な技術に息を飲みました。胸が少しどきどきしたあと、一番上の27階に辿りついてみると三江県の佇まいが一望ができて満足感を覚えました。
翌日、朝8時半ごろ、ホテルを出発し、19キロ離れた程陽風雨橋に向かいました。例年の秋ならば全然、雨が降るはずもない霧雨の中、バスが45分ぐらい走行しました。両側では、昔のままの水車も動いていたのも見えましたし、黄金色に変わりつつある稲作も、山の斜面にできたお茶畑も、車窓でもきれいに見ることも出来ました。
およそ45分後、いつも観光の宣伝として使われた程陽橋の雄姿がバスの前で見えました。「風雨橋」は鼓楼と同じようにトン族の代表的な建造物だと高く評価され、トン族の伝統的建築技術の最高峰と認められています。昔、外敵や獣の侵入を防ぐ役割を果たしたとも伝えられました。現在、トン族の村の玄関口として、ひいていえば村の象徴のようになっています。
目の前に現れたトン族の自慢作に思われた程陽橋は1916年に造られ、長さ76M、広さ3、4M、高さ10、6Mであります。中國の重要文化財と、トン族居住地域において一番有名な木造の橋と指定されています。今まで中國だけでなく諸外国から建築関係者も憧れて訪れたことがよくありました。橋全体が五つの石作りの橋杭の上に二層に組み合わせた材木を架けておきます。その上に、それぞれ五階の屋根の楼閣を造ることにしました。橋の両側に入母屋造りの屋根スタイルの楼閣が造られ、真ん中のが八角の寄棟造りの楼閣で、更にその両側に四角の寄棟造りの楼閣が配置されています。大自然の風雨に染められた材木の黒ずんだ色と周りの緑色とがコントラストよくできています。どちらから見ても、とても洒落ていて落ち着いています。これらの楼閣の間に屋根付きの廊下がつながり、普段、上を歩くと雨に濡れる心配もないし、吹き抜けなので風通しもよいから、「風雨橋」と名付けられたのです。通路の両側にも座れる長いベンチのような施設があるため、村人の休憩や議事などの場所としても機能されています。実用的にも美観的にも見事にマッチしたこの巧みな橋の構造に多くの観光客の心を捉まえて離さないのです。不思議な事にやはり釘を一本も使わないことなのです。
私たちが風雨橋に未練が残った中、いよいよ朝10時半から、程陽村のトン族の村人が公演する素朴なショーを見る時間になりそうです。程陽村のもう一つのシンボルである馬安鼓楼の前の広場で30分間にわたるトン族の民族ショーが公開されるということでした。一見すれば結構古い馬安鼓楼が広場のに北に位置し、周りにトン族の高床式の木造建築の家に囲まれています。ここに来ると、いかにもトン族らしい村の雰囲気に包まれ、興味がそそられます。広場の東に村のステージが設けられ、村への観光の誘致の一環として観光客に公開するショーを定期的に行われています。このショーで、ユニークなトン族大歌(地声のコーラス団)を楽しむことができます。このトン族大歌がトン族の無形文化遺産のように認められています。観光客として絶対見逃してはいけないとお勧めします。また、トン族の蘆笙の笛を吹きながら踊るダンス、蘆笙のメロディに合わせて展開するお酒の勧め踊りなどが観光客に親しまれています。時間があれば一軒のトン族の農家訪問を手配しても差し支えがありません。
しかし残念ながら、この日がトン族の特別な日でも、お正月でもないから、トン族の盛大な「百家宴」と賑やかな結婚の場面とは巡り合わせができなくて少し悔いが残りました。今度、時間をもう少し割いてゆっくりトン族の村を廻り、トン族の結婚式などを見学したいものですね。
程陽風雨橋は村人の玄関口として使われていますが、トン族の建築技術の高さを誇示しているようです。
三江県にある風雨橋国際大酒店は三つ星のホテルで、地元で一番いいホテルとして利用されています。側に三江鼓楼が高く聳えています。
ホテルに隣接している三江鼓楼はスマートな形をして木造で出来ており、ぜひ登ってみたいものですね。
三江鼓楼の前に大きい広場があり、人々がのんびりしています。
鼓楼の下から上向きに撮った写真で、どう見ても立派なものです。
鼓楼の中に入って見ると、なんとすべて木材で組み合わせた構造だと分かりました。鼓楼の隙間から光が差し込んでいるから、そう暗くはないです。
鼓楼の一番上に登ると周りの景色が一望に納めることができます。遠くに見えるのが三江県の民族広場であり、ここが新市街地を目指して町づくりを進めています。
目の前に流れる川が潯江と言い、三江県の町を二分しています。
潯江の向こうにあるのが三江県の旧市街地であり、トン族の住民が殆どです。
新しい市街地にどんどん住宅団地が現れています。
ここからでも三江風雨橋国際大酒店の屋根がはっきり見えますよ。
鼓楼の27階の上から見下ろして撮った写真であり、地面まで46mほどありますよ。高所恐怖症の方はご遠慮てください。
一番上にある階段として敷かれています。実は梯子なんですよ。勾配が急で慎んで登る必要があります。
この鼓楼が出来た当時に記念物として、トン族の女性の手作りの「御守り」を飾りました。
鼓楼の中で下から上向きに撮った写真であり、一見すれば蜘蛛の巣のように見えます。トン族の大工屋さんが木材を使いこなす技術に驚きました。
夜空にライトアップされた鼓楼が神秘的な様子を見せています。
程陽橋に向かう途中、バスから見える数々の水車が回っており、このあたり一帯の伝統的な農業の歴史を語ってくれました。
こんな山奥にある風雨橋でも遠いところからの観光客を引き付けることができ、大変、不思議なことのようにも思われますね。
「程陽橋」の上を歩くと周りが一律にして木で出来ています。100年余り経ったにも関わらず、まだ頑丈でしっかりしています。
今日は学校のお休みでしょうか。風雨橋の上で二人のトン族の子供が丁寧に瓢箪笛を吹きながら観光客からの「お小遣い」を稼いでいます。
向こう側から見た程陽風雨橋もきれいなスタイルを見せていくら写真を納めても飽きないですね。
風雨橋から2、3分ほど村に進んでいくと村のもう一つのシンボル的な存在が馬安鼓楼であり、その前に広場があります。
鼓楼の周りにトン族のお土産店もあり、藍染などで造ったお土産が販売されています。
鼓楼の東に村の古い舞台があり、毎日午前10時半からトン族の民族ショーが開かれます。今日は江西省からスケッチに来たある美術大学の学生たちはショーが始まる前にスケッチをしていました。
トン族の男女二組みに分かれ、蘆笙の笛のメロディに合わせて踊り始めました。
蘆笙の笛には様々なサイズがあり、音色もそれぞれ異なりますよ。
今度は有名なトン族大歌(地声のコーラス団)を始めました。これがトン族の無形文化遺産に指定されています。これで素朴なトン族の伝統文化の魅力が伺えます。
トン族の独特なお酒を進める踊りであり、観光客にも甘酒を進めてくれる習慣です。強制ではないですが、少しチップをやったほうが嬉しいという感じでした。
観光客に甘酒を勧めてくれました
続けて蘆笙の笛の踊りをしています。
民族のショーを見ている間、トン族のおばさんたちが懸命にお土産を売り込もうとしました。
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作者:( 「ふれあい中国」)